日本の歌 4
海人部の伝承から出た、海岸性に富む古代歌謡の代表的なものには、次のような例があります。
仁徳天皇は吉備の海部の直の娘で黒日売という美人を召して使っていられたが、大后石の比売の嫉みを恐れて吉備へ逃げ帰ってしまいました。
天皇は黒日売のあとを追っていって淡路島からはろばうと海の彼方を望んで歌いました。
おしてるや 難波の崎よ 出で立ちて わが国見れば 淡島 おのごろ島 濱榔の島も
見ゆ さけつ島見ゆ
・・・この歌は、古事記の中では、天皇が黒比売を恋しく思って淡路島から西の方の海を見渡して詠んだと伝えています。
しかし本来は、海人部の民の伝承した海上の国見の歌でしょう。
それが難波に都を開いた仁徳天皇に関して伝えられているのです。
紆明天皇に関して香呉山から大和国原を国見した歌がありますが、難波の突端からはろばうと海の国見をするのに最もふさわしい天子は、仁徳天皇です。
歌に詠まれている淡島もおのごろ島も実在の島というよりは国生み神話の中に伝えられる島です。